バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲 第1楽章 1stVn・・・。
24小節から25小節にかけてと、79小節から80小節にかけて、音の並びは同じです。しかし、25小節と80小節でスラーの付け方が楽譜によって異なっています。
(以下、できるだけ各楽譜の縦をあわせるため、適宜、幅の拡大縮小を行っています。)
この曲は鈴木教本で学ぶ方が多いと思いますので、鈴木教本から。
■鈴木教本1971版
24-25小節、79-80小節、スラーの形はどちらも3回同じパターンを繰り返します。
この形で弾き慣れていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
ベーレンライターの原典版を見ると
■ベーレンライターURTEXT
よけいなスラーが書かれていないのがいかにも原典版らしい(?)のですが、80小節にはくっきりはっきりスラーが書かれています。
(ちなみに、以前ご紹介したように調号が書かれていないので、最初のシに臨時記号の♭が付いています。)
これを受けてなのか何なのか、鈴木教本も現在の版ではこう変わりました。
■鈴木教本2011版
24-25小節、79-80小節、どちらも同じ形ですが、1971版とは違い、2回同じパターンの後3回目のスラーをベーレンライターの80小節と同じにしています。
(ついでに、25小節と80小節の入りのフィンガリングも変わり、下記2つの楽譜と同じになっています。)
他の楽譜ではどうでしょうか。
■IMC(ガラミアン編)
すべてカッコ書きですが、鈴木教本1971版と同じく、24-25小節、79-80小節、スラーの形はどちらも3回同じパターンを繰り返しています。
■ペータース(オイストラフ編)
ちょうど、ベーレンライター版に点線スラーを書きくわえた形です。
鈴木の2つの版もIMC版も、スラーの位置は違っても、それぞれの24-25小節と79-80小節とでの違いはありませんでした。ペータースは「25小節と80小節は違う」と言っています。
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24小節と79小節のスラーは、ベーレンライター以外のどの楽譜でも同じです。弾いてみての音も僕が聴きなれた音のイメージとも合います。これは、もう、こう弾こうと決めました。
25小節と80小節はどうしたものか・・・。26小節以降と81小節以降も同じフレーズなんですよねぇ。。。
ちなみに、2ndVnパートの同様の箇所は、上記の鈴木教本1971版やIMC版と同じパターンのフレーズで、このような違いはありません。
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結局、僕は、ペータース版のパターンを選ぶことにしました。
ベーレンライター原典版に重きを置く・・・ということがひとつと、実際に何度かこのパターンで弾いてるうちに、同じフレーズでも1回目と2回目で変わるこの弾き方が気に入ってしまったのです( ̄∇ ̄*)
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「バッハ ドッペル1楽章1stVn 80小節のスラー」が良いなと思ってくださいましたら、
こちらを ぽちっとm(_ _)m
バッハはしばしば曲中でアーティキュレーションを表す記号に変化をつけています。
それは本来「置き換え可能な豊かさ」の一例としての演奏への提案だったんでしょうけど、そうやって楽譜からなにがしかの意見を感じ取って弾いてあげるのはとてもいいことだと思いますよ。
shigさん、コメントありがとうございます!
“「置き換え可能な豊かさ」の一例としての演奏への提案”
とても良い言葉をいただいた気がします。“豊かさ”にぐっときました。
知識がないので楽譜を見てもよくわからないとあきらめずに、よくわからないけどこうかも、ということを積み重ねていきたいと思います。